【MVP】神田松之丞さんのポーズ分析。かっこいい猫背

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MVP 〜Mawarino Vivid Pose〜ってなに?

ワンポーズクリエイター®︎が出会った、素晴らしいポーズを紹介していく記事です。

恋に落ちるときは一瞬です。
ポーズの専門家が目と心を奪われちゃった。そんな鮮やかなポーズの数々を、皆さまにぜひお伝えしたい。

その名も“MVP 〜Mawarino Vivid Pose〜”!!

私たちの周りには、素晴らしいポーズがゴロゴロしているんです。
どうか!どうかお立会いください!!あなたの身の周りのお宝を見逃さないで!!

◆OPC®︎的グッとくるポイント

  • 「映え」とは無縁
  • 「映え」狙ったとしても、意図とは別の何かがあふれ出ちゃってる
  • どうしてそうなったのか誰かに聞きたい etc.

第2回目のMVPは…〝神田松之丞さんの講談スタイル

ご本人公式HPからお借りしました

浅草演芸ホールにて一目惚れ〜

神田松之丞さんオフィシャルサイトhttps://www.matsunojo.com


MVPの理由

新春の浅草演芸ホールに寄席を観に行きました。襲名前の神田松之丞さん(2020年1月)の姿に心奪われました。

一言で言うと「かっこいい猫背」。芸とからだのかたちが一体となったスタイルでした。

TVで拝見する限り、背中になんかしょってるなぁ!と思ってしまうくらいの猫背でいらっしゃる。どうしてああなったんだろ。なんで首があそこまで前に出てるんだろ。
実際に生で講談を聴くことができたので、彼のトレードポーズである猫背を勝手に分析しちゃいます!ああ、職業柄そうなってしまったからだのかたちの分析、大好きです…。うずうず。いいでしょ!迷惑かけないから!ポーズ萌えさせてくれ!


神田松之丞さんを勝手にポーズ分析

いよッ待ってましたッ

新春らしい明るい色のお着物で〝ススス…〟と登場した松之丞さん。大柄ですが歩幅は狭め、ヒザ下で歩くような感じ。これ、着物が日常着の人の歩き方ですよね。

高座に座り正面を向くとあの三白眼。独特な魅力が漂っています。…なんか始まるでしょ。始めてくれるでしょ!釈台(小さい机のようなもの)をバッシ!!ビシビシ!と叩くと、一気に空気が変わります。お客さんのスイッチオーーーーーン!彼の猫背もオーーーーーン!気持ちイーーーーーイ

凄まじい熱量を持ち、ひと息にたくさんの言葉を詰め込んでお客さんを引き込んでいきます。ときに前列のお客さんに囁くように、ときに二階席後ろのお客さんに呼びかけるように、的確な声のボリュームでいくつもの空気をやり取りしているよう。「浴びせる」より「引きずりこむ」がしっくりくるイメージ。エネルギッシュなのにミステリアスです。きっとここに彼の猫背のキーがあるような…。


気づいたこと

  1. 寄席の高座って予想より高さがあるのね
  2. 持ってる扇子と大きいやつ(張扇)、めっちゃ早く動かすじゃん

寄席にお詳しい方は基本事項かもしれません。

そりゃ猫背になる①寄席の高座は意外と高い

客席と舞台までの距離は短かったのですが、舞台の高さは予想より高かったです。劇場によって差がありますが浅草演芸ホールは、最前列の男性のお客さんが姿勢を正して座っていても見上げている様子でした。

噺家さん側は、二回席のお客さんにまで届かせようと意識をすると、腰を立てて姿勢良く座るのが適切なのでしょう。しかし、それでは近くのお客さんは引き込めない。スキがないから。ビシッと姿勢いい人が自分の目の前でものすごい勢いで話してると、人って距離を感じちゃうんじゃないかと。ちょこんと座ってる人が自分に囁くように「ねェお父さん、そうでしょ」と言われた方が、グッと心掴まれちゃうよなぁと思います。

近いお客さんからどんどん巻き込んで、直でやり取りして味方につけていくのが寄席の魅力。すると自然とからだのポーズは、囁くようなかたちになりますわね。

あうるすぽっと公演インタビューよりお借りしました

そりゃ猫背になる②かるた取りの姿勢

◆扇子と張扇、音の使い分け

松之丞さんは話の中身に合わせ、出る音の違う2つの道具を巧みに使い分けて空気を作っていたのが印象的でした。この扇子と張扇についてはこちらの記事にありました。さすがあうるすぽっとさん、パフォーマンスの観点からインタビューされています。叩いた時の音の質や劇場の椅子にも話が及んで興味深い。

空気を作る張扇は相棒

https://www.owlspot.jp/topics/interview/post_7.html

ポーズクリエイター的観点からいうといい音を出せるからだは、力は抜けているけどコントロールできている状態です。

◆お試しテスト◆
試しに、指先まで力を入れて拍手をしてみてください。パチパチパチ…

もっと早くできます?せ〜のっパチパチパチ…

腕全部がすごく疲れますよね。
次は、指先をラク〜❤︎にして拍手をしてみてください。せ〜のっパチパチパチ…

どうでしょう。
早い拍手がラクにできませんか?そして、さっきよりいい音が出ませんか?

からだの力を抜くと響く音が出るんです。力を指先まで込めてした拍手は、どことなくこじんまりしている音になっているはず。より早い拍手ができるのは、手首より先の力を抜くことができればヒジをピンポイントで固定(これがコントロール)できるから。疲れにくく、部分的に早く動かすことができます。

これって当たり前じゃんと思いますよね。
しかし人前で絶対ハズしちゃいけない、ときに出来るかと言われると…。ね。緊張します。体に力入っちゃう。俳優やダンサーが舞台で〝三三七拍子する〟〝ホーホケキョ♪と口笛を吹く〟、こういうことが意外と難しかったりする。
環境が変わっても、これが毎回出来るのがプロなんです。

松之丞さんのように、異なる2つの音のタイミング・スピードさらに音量もコントロールするとなると、もう大変です。重心は前!手首は自由に!そうでなきゃあの技は成し得ない。そう、常にかるた取りのような姿勢でいなければならないのです!
ホラ、猫背さんの完成だ〜❤︎❤︎


猫背って悪いのか?

腹のなかに抱えているようにも、大きな何かを背負っているようにも感じる松之丞さんの猫背。「言葉を浴びせる」より「ドラマに引きずりこむ」ようなエネルギッシュでミステリアスな彼の芸と、からだのかたちが一体となったオリジナルスタイルがあの姿勢でした。姿勢を変えたら芸の調子もきっと変わってしまうのでしょう。

頭に浮かんだのは〝ファイティングスタイル〟。
柔道でもボクシングでも綱引きでも、相手の懐に飛び込んだり引きずり込むには、重心を低く構えるのが基本。格闘技の選手を〝その猫背は治したほうがいい〟なんて注意する野暮な人はいるのだろうか。
表面のことではなく、姿勢や生き様がからだにあらわれているものをファイティングスタイルと呼ぶのでしょう。一番外側に近い中身。

神田松之丞さんの実に興味深いからだのかたち。エネルギッシュ・ミステリアス・距離感センサー、以上の点からこの度のMVPに選ばせていただきました。

※ファイティングスタイルは真似できませんので「このポーズのつくりかた 〜推測ポーズレシピ〜」は割愛いたします。


次はどんな素晴らしいポーズに出会えるのでしょうか。
お楽しみに!